統合報告書の進め方

情報整理

1.歴史の再整理

理解しているようで知らない自社の歴史について改めて整理・言語化をします。具体的には、社史や過去の社内報、記事などをみて下記を整理します。

歴史から情報整理する際のポイント
  1. 創業時の哲学や理念の言葉が生まれたきっかけ(創業者の思いなど)
  2. 事業や技術力誕生や発展の背景
  3. 過去に行ってきた価値創造のエピソード

これらを歴史から抽出するワークを行い、自社のフィロソフィーや自社の強み・競争優位性を深掘りしていきます。 これを行うことで自社のアイデンティティを再整理することにも繋がり、今後のブランディングにも影響します。

ワークの内容

社史の再整理
社史を読み込み、創立の理由、新事業が誕生した理由、なぜ新しい事業を生み出すことができたか、歴史の出来事から抽出。
情報の抽出、言語化
社史の情報を基に、自社の歴史でポイントとなる出来事を抽出し、成長につながった要素を言語化。

2.事業の再整理

事業の内容はもちろんのこと、具体的に自社の製品やサービス、事業活動がどのように社会的な価値を創出しているのかを整理します。用いるのはSDGs。SDGsの17のターゲットと169のゴールから逆算して、自社の製品や自社の製品が使用されてできた最終製品がどのような課題解決に結びついているかを洗い出します。

例えば、半導体メーカーであれば、新たな製品を作ることで、クライアント企業の業績がアップするだけでなく、自社の半導体が使用されることで、技術革新が起こり、経済が活性化。世界で雇用を生み出すきっかけになり、貧困を解決できるなど、最終消費者の価値をイメージして、洗い出しワークを行うことが重要です。また、自社の製品やサービスを社会課題と結びつけること社会価値を具体化することができ、自社のパーパス(存在意義)、ビジョン・長期目標の具現化にもつながります。

ワークの内容

ビジネスモデルの整理
IR資料や経営企画部などにヒアリングを行い、ビジネスモデルにおいて重要な点や独自性を言語化し、ビジネスモデルの再整理を実施。
創出価値の整理
SDGsの169の項目や社会課題と事業を照らし合わせて、どの分野(社会課題)に各事業が貢献できるかを整理。

3.ビジョンやありたい姿の見える化

10年後などの長期視点で自社がどのような姿でありたいのか、社会においてどのような存在でありたいのかを言語化しましょう。特に数値目標しかない企業はこのありたい姿を言語化することが重要です。言語化することで、社会へのコミットメントに繋がり、未来の社会において、どのような価値を発揮し、持続的な成長を実現したいのかを示すことになります。

また、すでにビジョンがある企業はそのビジョン実現のために、具体的に取り組んでいることや今後取り組みを進めることについて具体的に言語化、見える化をして行きましょう。そうすることで、ステークホルダーにビジョン実現の具体性を伝えることができます。

ワークの内容

ビジョンと背景の整理
次年度の経営方針の骨子や経営会議の資料から方針の背景を一つ一つ整理。その理由を将来と現在のギャップ(リスクと機会)として言語化。
取り組みの整理
ビジョン実現や未来への取り組みとしてすでに進捗している活動を社内報やIR資料等から洗い出し、未来を作る取り組みの一覧を作成。

4.ストーリーの紐付け

1〜3の情報を一貫したストーリー(過去→現在→未来)としてまとめます。まとめるときのポイントは“WHY”です。一つの情報に対して、なぜならをつけて言語化していくことで、洗い出した情報同士を紐づけることが可能になります。ストーリーができれば統合報告書で語るべき内容が固まったと言えます。